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花園報告 チーム武蔵、6年間のノーサイド

花園報告 チーム武蔵、6年間ノーサイド

花園報告 チーム武蔵、6年間ノーサイド

12月30日、生駒おろしの寒風は全く吹かない暖かく穏やかな空。チーム武蔵の終焉を告げるノーサイドの笛の音が、柔らかく鳴り響いた。勝利が叶わなかったことより、この大好きなチームが解散してしまうこと、いつも一緒に過ごしてきた仲間たちとのかけがえのない時間が終わってしまったことが悲しくて、特に2年生たちから大粒の涙がこぼれ落ちた。

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第103回全国高校学校ラグビーフットボール大会、いわゆる花園に2年ぶり8回目の出場を果たした。コロナ前に戻って4年ぶりの開会式が行われたが、高校ラガーマンたちにとっての夢の世界の雰囲気を味わう余裕はない。試合が開会式直後の第1試合だったため、会場入りしてから実に慌ただしく時間が過ぎていく。もしかしたらそのバタバタ感のおかげで、いつもはキックオフまで緊張しまくる選手たちは救われたのかもしれない。

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初戦の相手は日本ラグビー界に名を馳せる古豪・秋田工業。最多出場回数、最多勝利数、最多優勝回数を誇り、今年も東北地区王者に君臨するチームだ。

平均体重92キロを超える重量FWを軸にキックとモールに絞り込んで戦う秋田工業か、「スーパーアタッキングラグビー」を掲げ、高速展開で相手を置き去りにすることを狙う静岡聖光学院か。真逆のチーム同士の対戦は、どちらが自分たちの土俵に相手を引きずり込めるかの勝負となった。

リスクを避けるためにキックを使って敵陣に入っておけば相手の得点源はない。自陣から無闇に攻撃してもし反則を犯すと、相手が望むゴール前ラインアウトモールという流れになる。そんな合理的な理屈は百も承知していた。それでも「自陣でも蹴らずに俺たちは攻め続ける。俺たちのラグビーを貫き通す」で腹を括った。

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前半の開始早々から、自陣で(プラン通り)無謀に見えるアタックを仕掛けては、ミスで終わってしまう。それでも相手の強みであるラインアウトモールをFWが技を駆使して完封し、スクラムも耐え凌いで相手に流れを渡さなかった。

理論派が見れば無茶で非合理なゲームメイク。しかしそれが秋田工業の心身を徐々に削って主導権を握り、強引にうちの土俵に引き摺り込むことに成功した。キャプテン・武蔵らが前に出ては、HB豪太郎と荘が相手を置き去りにすべくボールを高速で散らす。最後はエース謙真が相手を絶望させる脅威のランでトライを量産した。36対15。チーム武蔵は見事にまた歴史を創る勝利を収めた。静岡がもはやラグビー弱小県ではないということを、東北王者の名門校を堂々たるラグビーで倒し切ったことで証明した。

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12月30日、2回戦の相手は強烈な外国人留学生を軸にしながらも攻守ともに総合的に非常にレベルが高く、隙がない強豪・目黒学院との対戦となった。あの國學院久我山を下しての花園出場。今シーズンの聖光は早実や東京高校、本郷高校など東京のチームとの交流が多かったことからも、秋田工業とは異なりどの程度強いのかイメージを掴みやすかった。しかしその想像よりも遥かに強かった。

残念ながらチームの要となる複数の選手が感染症で欠場となってしまった。ゲーム経験のほとんどない1年生2人を抜擢し、不慣れなポジション変更によるメンバー構成となった。1回戦の身体的ダメージ(痛み)も多くの選手たちに残っていた。しかしそれらの要因を抜きにしても勝てなかったと思える差を感じさせられた。特に相手のNo.8ロケティー選手については、もうどうあがいても止めようがないほどの異次元の破壊力だった。

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勝っても負けても晴れやかな顔で戻ってきて欲しいと願っていたが、力差を見せつけられて敗れた故か、複雑な表情でグランドをあとにした。普段は最も先輩をなめくさった態度を取る2年生の凌太が、最もわかりやすく目を真っ赤にして涙を流していた。

チーム武蔵の旅が終わった。

 

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武蔵(キャプテン)

「憧れだった花園で高校3年生としてプレーできて、本当に楽しかったです。ベスト8という目標は達成できませんでしたが、みんなとラグビーしている時間は幸せでした。また、現地に来てくださった先輩方や同級生、関係者の皆様の応援本当に心強かったです!!6年間ありがとうございました!」

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謙真(バイスキャプテン)

「花園の大舞台で戦えたことをとても嬉しく思います。1年間はとてもあっという間でした。目標であるベスト8に届かず、悔しさが残りましたが、チームも個人も成長したと感じることができました。応援いただいた方々への感謝を忘れず、次のステージで活躍できるようにしたいです。」

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洋希(マネージメントリーダー)

「初戦が秋田工業と決まった時は相手の強いFW陣に対して負けないか不安がありましたが、対策していたモールDFとスクラムでこちらが有利に試合を進めることが出来たのでよかったです。目黒との試合はインフルに罹ってしまい一緒にプレイすることができずに悔しい思いをしましたが、そんな僕を励ましてくれた仲間の優しさを改めて感じることができました。高校最後に花園という舞台でラグビーが出来て本当に楽しかったです。たくさんの応援ありがとうございました。」

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壱悟

「私はこのチームだからこそ楽しくやれたと思います。「ベスト8」という目標を達成したかったが2回戦で負けてしまいました。こんなに悔しい思いをしたのは初めてでした。まだ、このチームでプレイヤーとしてやりたかった。後悔や悔しさが残るなか、今年のチームメイトと一緒にラグビーをできたのはとても幸せでした。後輩や先生、スタッフの方々のサポートには感謝しかありません。また、応援してくれた方々にもありがたく思います。そして、ここまで一番近くで支えてくれた家族にも感謝しています。ここまで楽しく幸せにプレーをできたのは皆様のおかげです。本当にありがとうございました。」

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邦英

「花園が終わり、高校ラグビー生活が終わりました。僕は大学ではラグビーをやらないので6年間のラグビー生活も終わりました。大学受験が控えている僕にとって、この一週間は夢のような時間でした。みんなと話したり、ご飯を食べたりした時間は本当に楽しかったです。目標としていたベスト8には届かなかったけれど、みんなと一緒に試合に出れたことをとても光栄に思います。後輩たちにはこれから毎年花園に来て、活躍をして欲しいです。最後になりますが、本当にラグビーを続けてきて良かったです。これまで支えてきてくださった家族、先生方、仲間に感謝して、この経験をこれからの人生の糧にしていきたいです。6年間お世話になりました。」

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豪太郎

「花園でのたくさんの応援がとても励みになりました。仲間と最高の場所で戦えたことに感謝したいと思います。花園での瞬間は一生忘れることはないです。サポートしてくださった皆様に深く感謝し、これからもがんばります。」

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太郎

「花園を終えて、僕はとても悔しいです。自分達が決めたベスト8に行けず、正月すらも越せなかったです。自分達には足りないものだらけだったなと負けて色々なものを感じます。この経験を大学ラグビーで、活かしていきたいと思います。応援ありがとうございました。」

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星多

「花園二回戦ノーサイドの笛が鳴った瞬間、悔しさが溢れ出ました。号泣する後輩、同級生をみた時、僕がもっといい選手だったらとたらればばかり考えていました。引退してしまった今そんなことを考えたって無駄であることは分かっています。期間がある中で6年間を振り返り、自分に何が足りなかったのかをこの先問い続けてみようと思います。この先も応援よろしくお願いします。」

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着替えて写真撮影や挨拶などを終えたのち、それぞれ自由に花園観戦。観客席や土産店で目にした聖光学院ラグビー部員たちの姿は、他の花園出場校の生徒たちの特有のいかつい雰囲気とは異なり、なんだかオーラのない普通の高校生の集まりに見えた。

県内4冠達成、東海地区準優勝、全国7s静岡史上最高の11位、花園で秋田工業撃破。そんな見事な戦績を残しながらも、オーラゼロで自然体。相変わらず後輩が先輩を小馬鹿にしてふざけ合っているいつもの光景。「チーム武蔵らしいな」となんだか嬉しかった。

 

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松山よりご挨拶

監督として「楽しむこと」を伝え続けたシーズンでした。人間力育成の手段でも義務でも使命でもなく、ラグビーという最高のスポーツを純粋に楽しむこと、自分のためではなく愛する誰かのために自分の限界を越えるというかけがえのない経験を楽しむこと、夢を憧れではなく目標に変え、失敗と成功を繰り返しながら仲間と本気で勝利を追求するプロセスを楽しむこと。そんな様々な「楽しむ」を部員たちが少しでも感じ、体得してくれていたら嬉しく思います。3年生にとってはこれから続くそれぞれの人生も、下でも後ろでのなく前を見て、楽しんで歩んで欲しいと願っております。

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聖光ラグビーが掲げる「日本一魅力的なクラブ」というビジョンの「魅力的」とは、それぞれの主観に委ねられます。私にとっての「魅力的なクラブ」とは、上記のような「楽しむ」気持ちと仲間への愛に満ち溢れ、さらには内輪を見るだけでなくその視野と足を世界に向けて、今もなお紛争や飢餓や気候変動の影響で亡くなり続けている仲間たちのために具体的な行動を起こせる人間が育つクラブです。部員たちにはラグビーの文化を理解すると共に特有の精神を体得し、その尊い精神で世界平和や国際支援に貢献する人間・組織に育って欲しいと願ってきました。

そのような思いからクラブビジョンとして「日本一魅力的なクラブ」だけでなく「愛と笑顔とプライドのあるクラブ」「世界平和や国際支援に貢献できるクラブ」の3つを掲げました。

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今年はそんなビジョンの実現に向けた様々なことを行うことができました。

インドでは部族学校の貧しい子どもたちやスラム地区の子どもたちとラグビーを通じた心の交流を行いました。

マレーシアの国際大会では、ラグビーを通じてなら国や宗教や文化の違いなど何の意味も持たず、世界に深く心の通い合った友をこんなにも短い時間で作ることができるということを経験しました。

国際サミットではラグビー憲章や「闘争の倫理」など、ラグビー精神の力が国際平和と共生社会を実現に必要なのだというプレゼンを海外の生徒たちに向けて行いました。

全国7sや花園では静岡の歴史を塗り替える感動的なゲームを演じ、多くの方に笑顔と感動をもたらすという恩返しができました。

そしていつでも笑顔と愛の溢れる集団になっていました。

試合の夜に行った最後のミーティング、引退となった3年生たちに「俺にとってはだけど、みんなは日本一魅力的なクラブだったよ」と感謝を伝えました。

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3年生にとっては、明日から新しい道のスタートです。

「青春とは 意気であり 感激であり 顧みる微笑みである」

闘争の倫理を説いた大西鐡之助先生の言葉です。一人ひとりにとってこの愛と笑顔に満ちた努力の日々をいつか振り返り、「泣いたり悩んだり大笑いした聖光ラグビーでの日々が今の自分の基盤であり、幸せな人生を築くスタート地点だったよね」と微笑んでくれたらいいなと思っています。

私個人としては力不足で全く生徒たちに貢献できず、申し訳なさを抱え続ける日々でしたが、皆様の温かい応援のお陰で何とかここまでやってくることができました。

心より感謝申し上げます。本当にありがとうございました。

 

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2024-01-01 22:51:55
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